「そろそろ働こうかな?」
「働き方見直してみようかな?」
と思っているママ・パパが気になるアレコレを、社会保険労務士の渋谷恵美さんに、分かりやすくまとめてコラムにしていただいている【働くママ・パパのお役立ち情報】!
このコラムを読んで、多くのママ・パパ達の役に立てば嬉しいです!
それでは早速ご覧ください…♡
こんにちは。
社会保険労務士の渋谷恵美です。
月末や年末になると、パパ・ママや会社からこんな声をいただく機会が増えます。
年収の壁があるから、
これ以上働けないんです(働かせられないんです)。
社会保険の扶養者となるには、<年収が130万円/106万円未満であること>という要件をクリアしなければなりません。
それがこのような声につながっているんですよね。
そのような状況を踏まえ、現在までにこの「年収の壁」に関する新たな対策案が政府によって検討されています。
まだ案ですし、確定したわけではないのですが、早ければ年内より順次実施される方針とのことです。
そこで今回は、政府の検討している対策案を見ていきながら今後の扶養の動向について考えてみたいと思います。
おさらい!
社会保険の扶養と
130万円/106万円の壁とは?
私たちは誰もが公的な健康保険制度と年金制度に加入することが義務付けられています。
そして加入することで保険料の支払い義務も発生します。
しかし、配偶者等が社会保険制度に加入していて、さらに自身の年収が130万円未満であることなど一定の要件に該当することで「配偶者の被扶養者」となれるわけなんです。
被扶養者となれば社会保険料を支払わなくても、病院の窓口での3割負担、出産した際の費用の給付など、一定のサービスを受けられるようになります。
そしてこの「年収130万円未満」という要件について、巷ではわかりやすく「130万円の壁」と呼んだりしています。
また、従業員が101人以上の会社にお勤めの場合は、月収が8万8千円以上で週20時間以上働くと自身で社会保険に加入しなければなりません。
ですので、従業員が多い会社にお勤めのパパやママが扶養に入るためには「106万円の壁(8万8千円×12ヶ月≒106万円)」をクリアしなければなりません。
年収の壁が与える悪影響!?
“社会保険上の扶養を抜けると
自身にも保険料がかかってしまう…”
それを避けるため、年収が130万円/106万円を超えないように「就業調整」をしたことがある経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
しかし、ここ最近は賃金の上昇が進んでおり、扶養パパや扶養ママの働ける時間数は年々減ってきています。
中には年収を抑えるために週20時間未満の雇用形態に変更し雇用保険から抜けざるを得なくなった、もらえるはずの賞与を辞退してしまった、といった声も。
会社にとっても就業調整によって人手不足が進み、特に年末にはそれが深刻化してしまっています。
問題はそれだけではありません!
年収の壁を超えて社会保険料を支払うとなった場合には、「手取りの逆転現象」が起こってしまいます。
例えば従業員数が101人以上の会社で週20時間以上の勤務をした場合を見てみましょう。
月収8万5千円だと、年収は102万円となるため社会保険料はかからず、ほぼ同程度の収入が手取りとしてもらえます。
しかし、月収88,000円となると社会保険料が発生するため、手取りは90万円ほどに。
年収の壁ギリギリで働いた方が手取りが増える、といったことが起こってしまっていたんですよね。
これも就業調整をする要因となっています。
就業調整に対策を!
報道されている政府案
○一時的な収入増であれば
年収の壁を超えても扶養のままでOK!
通常は年収の壁に収まる働き方をしているのに、繁忙期や急な同僚の退職などで一時的に収入が増えてしまい、壁を越えてしまった…!
このように、扶養パパや扶養ママが一時的な収入増が原因で年収の壁を越えてしまった場合、直ちに扶養の認定を取消すのではなく、通常の労働条件や過去の給与明細などを考慮し判断することを各健康保険組合等に再度通知していくということです。
実はこれ、現在も出されている内容なのですが、加入する健康保険組合ごとに判断に差があるところ。
再度内容を詰めて通知を強化していくことで、扶養パパや扶養ママの一時的な就業時間の増加を可能にし、就業調整による人手不足を解消していきたいという狙いの様です。
○まずは106万円の壁に着手。
社会保険加入による年収逆転を防ぐ!
「年収の逆転が起こるから就業調整をする」
それを打破するため、会社が扶養パパや扶養ママの労働時間の延長や賃上げに取り組んだ場合に、必要な費用を補助するなどの支援強化パッケージの構築を進めているそうです。
- 何とか手取りを増やしたい
- 社会保険料が上がった分働く時間を増やしたい
そんなパパやママの思いを通りやすくするための施策です。
社会保険に加入すると、社会保険料を支払う分、自身が受けられるサービスも多くなります。年収の逆転が減れば、パパ・ママの中でも扶養を抜けて働くという選択肢が増えるかもしれませんね!
基本的には
保険加入者を増やしたい流れ
現在は、101人以上の会社で働く場合が対象の106万円の壁も、2024年の10月には51人以上の会社へとシフトしていくことがすでに決まっています。
最低賃金もこの10月には上がることが予想されますし、ますます扶養に入り続けることが難しい世の中となるようにも感じています。
以前に「106万円の壁って!?~社会保険の適用拡大とは?~」という記事でもお話ししましたが、これを機に自分の働き方について見つめ直してみることも1つかもしれません!
扶養については今後も国での話し合いが行われる見込みで動向が気になるところ。
また詳しいことが発表され次第ご報告いたします!
■渋谷恵美氏 プロフィール
2児のママ。社会保険労務士。
働くことのプロとして、企業の労務管理のサポート、相談、指導、アドバイス等を行っています。その傍ら、働くママに向けて知って得する情報をInstagramにて配信中。